ユーザビリティの低下による不快感を用いたSNS利用に対するセルフコントロール手法

 SNSの普及に伴い,その過剰利用が問題となっています.これらはSNS依存症としても知られ,様々な身体的・精神的な悪影響を引き起こします.SNSに取り入れられている様々な報酬システムやスマー トフォンの高い利便性がSNSへの依存を高めるため,その利用を制限することは非常に困難な課題となっている.既存のセルフコトンロール手法として,スマートフォンを家に置いていく等の戦略が採用されています.一方で,こうしたSNSの利用を制限する戦略は,スマートフォンが生活必需品となった現代社会で持続可能性の低さが課題です.
 本研究ではスマートフォンの必需性を考慮した新たなセルフコントロール戦略として,「ユーザビ リティの低下による不快感」を用いて人の内面状態をネガティブにするUIを実装し,SNS利用衝動 を抑制する手法を提案します.本手法は,URLが更新されるたびに擬似読込時間を挟むことで表示を遅延させ,スワイプによるスクロールを実際の量から減少させるものです.ユーザビリティの低下による制限の有効性を評価するために,Baseシステムを実装しました.BaseシステムはSNSを一括管理するiOSアプリケーションで,ユーザは1日の目標利用時間を設定でき,これを超過した際に利用制限が課されます.利用制限にはユーザビリティの低下の他に比較手法として「通知」と「アプリ画面のロック」による制限を実装しました.
 Baseシステムをインストールした34名の被験者による4週間の評価実験の結果,目標利用時間を超えた後の超過利用時間を比較すると,ユーザビリティの低下による制限はSNSの利用制限は通知による制限より有効であり,アプリ画面のロックによる制限と同等の効果がある可能性が示唆されました.また,Baseシステム自体の利用が被験者のSNS依存度を弱めた.これらの結果より,人の内面状態をネガティブにするユーザビリティの低下によってSNS依存からの脱却に対する有効性を示しました.

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