研究課題3:データの力で視力を拡大するインタラクション

豊田グループ

人々がウェブや携帯のアプリから推薦された情報を得る場合と、自らの興味に基づいて検索する場合の双方において、人の認知能力や可処分時間が有限であることから、自身の行動に影響するあらゆる情報を獲得することは極めて困難である。これを一般に「視野の限界」と呼ぶ。街の巨大な情報環境においては、それ全体を俯瞰することが不可能であること、および情報の解釈が困難であることが、現実的な街と人のインタラクションにおける問題です。

統計手法や機械学習手法を用いたデータ解析は様々な社会的課題の解決に役立つものの、近年の高度な解析手法で用いられるモデルは複雑化が急速に進み、結果が得られた原因や理由を人間が解釈することが難しくなっているため、意思決定者が結果を受容しにくいです。さらに人は、感覚、情報の把握能力、言語能力、社会的関係性の差異により受容できる情報に偏りがあるため一律的な情報提示ではその効果に限りがあります。したがって複雑な手続きで得られた情報をパーソナライズしながら解釈可能な形式で提示する技術が必要です。

豊田グループでは、これまでに大規模なウェブページ、ソーシャルメディア情報、並びに鉄道旅客トラフィックやドライブレコーダデータなどのビッグデータ解析および可視化に関する研究を推進し、事故リスクを考慮したカーナビアプリ、通信・道路インフラ維持管理のための解析・可視化システム等で実ソリューションに結び付けてきた実績があります。また、言語現象において人々の一般認識の抽出ならびに、使用言語および言語使用者としての個人を考慮した自然言語処理モデルの研究を推進しています。これらの実績に基づいて豊田グループでは、以下に示す研究開発を実施しています。

  1. 街の情報環境を俯瞰可能とする情報蓄積・解析・可視化基盤の構築
    多様なビッグデータを収集・蓄積し、実世界データ、ソーシャルメディアデータ等の多様なデータを統合的に解析し滑らかに可視化する基盤を構築する。
  2. 大規模データ解析結果の理解を促進する情報可視化手法の確立
    データ解析の結果や、解析のためのモデルの解釈を支援するための情報可視化手法の確立を目指す。本研究課題では、ドライブレコーダ、フローティングカーデータ、携帯位置情報に基づく混雑データ等の多様なデータ解析結果の解釈支援手法の研究開発を実施する。
  3. 個人の属性を考慮した言語情報提示のための基盤技術の確立
    個人の使用する言語や感覚、社会的関係等を考慮した自然言語処理モデルの構築を通じて、人の感覚や思考の理解と、個人の属性を考慮した言語情報提示の実現を目標とする。本グループではこれまで、複数言語を共通モデルで扱えるようにする多言語モデルや、個人の感覚の違いを反映した自然言語処理モデルの構築に関する研究を推進しており、これらの自然言語処理モデルに基づき、提示する言語情報を個人に適合して変換する手法等の研究開発を行う。さらに、ソーシャルネットワークにおける人間関係等を考慮した効果的な情報提示の手法の研究開発を行う。