ソーシャルメディアデータに関しては、社会問題に関する議論の分析を通じて、人々の意見が両極端に分極化する現象を分析・可視化し、コミュニケーションの分断が発生する原因を究明可能とするとともに、分断の抑制に向けた手掛かりとなる現象の分析を実施した。ソーシャルメディア上におけるこれまでの分析において、エコーチェンバーや情報伝播ネットワークの分断等、ユーザがリベラルと保守の派閥に分極化していることを示す現象が確認されています。これらの研究では、両極に偏っているパルチザンユーザと、中庸なユーザとの性質の違いが比較されてきましたが、ユーザの行動が分極化に与える影響は明らかではありませんでした。本研究では、日本国内のTwitterデータを分析に、日本においても政治的分極化が発生しているかどうかを確認した上で、分極化の発生している話題において、リベラル・保守間において実際にどのような情報拡散行動が起きているかを分析しました。
さらに、日本においては多党制により複数の政党がそれぞれの立場で活動を行っており、それが分極化に及ぼす影響についても分析を行いました。その結果ユーザ間のリツイート関係を表すグラフが2極化している場合に、自民党支持者と共産党支持者の間で分断が起こっており、民進党や公明党の支持者はそ の間を取り持つような形でグラフ上に分布していることが判明しました。こうした分析により、不健全な分極化が発生するメカニズムやそれを抑制する方法等について検討を進めていく予定です。
研究成果
- Takumi Omae, Masashi Toyoda and Sho Cho, “Analyzing Political Polarization on Microblogs with Social Network Segregation and Users’ Political Leanings”, The 12th International Conference on Social Informatics, 2020
- 大前拓巳, 豊田正史, 張翔, 吉永直樹, “多党制を考慮したマイクロブログ上の政治的分極化における党派横断的な情報拡散の分析”, 第13回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム (DEIM2021), 2021
- 大前拓巳, “日本における政治的分極化の理解に向けたマイクロブログ上のユーザ間での党派横断的な情報共有の分析手法”, 東京大学修士論文, 2020