アテンション・マネージメント: AIによるプッシュ通知最適タイミングの推定

今日のモバイル・ユビキタスコンピューティング環境では、ユーザーの注意力リソースが限られていることが、プッシュ通知の配信のボトルネックになっています。そのため、特にユーザーがモバイルで複数のウェアラブルデバイスやモバイルデバイスを使用する状況において、通知によるユーザーの精神的負担を最小限に抑えることが重要です。そこで、我々は、それらのデバイスを使用しながら、ユーザの生活のブレイクポイントを特定し、その瞬間に通知を配信する新しいミドルウェアAtteliaを提案します。

Atteliaは、ユーザが自然に使用・装着するモバイル・ウェアラブルデバイスのみを使用し、アプリケーションに一切手を加えず、専用の心理生理センサも使用せずに、リアルタイムに動作します。41名の参加者によるユーザーのマルチデバイス環境(スマートフォン、スマートウォッチ)での1ヶ月間の実環境評価で、Atteliaの有効性が検証されました。UIイベントによるブレークポイント検知に加え、新たに身体活動ベースのブレークポイント検知を行った結果、UIイベントのみを用いた従来のシステムに比べ、ユーザーの作業負荷の感覚を71.8%低減することができました。また、スマートウォッチに本機能を追加した場合、通知配信のタイミングがランダムな場合と比較して、19.4%の作業負荷の軽減を実現しました。また、スマートフォンとウォッチのマルチデバイスによるブレークポイント検出では、従来のシステムに比べ、約3倍の作業負荷の軽減を実現しました。

そして、提案システムをYahoo! JAPAN Androidアプリの実製品スタックに展開し、従来システムと比べて10倍の利得が得られたこと、通知内容のパーソナライズ度が大幅に向上し、異例の速報通知状況でも予想外に性能が良いことなど、いくつかの大きな成果を確認することができました。これらの結果を受け、提案システムは、1000万人を超えるAndroidアプリユーザーが利用するYahoo! JAPAN製品環境において、全ユーザーに正式に展開され、その効果を享受しています。

研究成果

  • T. Okoshi, K. Tsubouchi, and H. Tokuda, “Real-World Large-Scale Study on Adaptive Notification Scheduling on Smartphones,” Pervasive and Mobile Computing, vol. 50, pp. 1–24, 2018.
  • T. Okoshi, K. Tsubouchi, M. Taji, T. Ichikawa, and H. Tokuda, “Attention and Engagement-Awareness in the Wild : A Large-Scale Study with Adaptive Notifications,” in Proceedings of IEEE International Conference on Pervasive Computing and Communications 2017 (PerCom ’17), 2017, pp. 100–110. (Best Paper Award Nominee)
  • T. Okoshi, J. Nakazawa, and H. Tokuda, “Interruptibility research: opportunities for future flourishment,” in Proceedings of the 2016 ACM International Joint Conference on Pervasive and Ubiquitous Computing Adjunct – UbiComp ’16, 2016, pp. 1524–1529.
  • T. Okoshi, J. Ramos, H. Nozaki, J. Nakazawa, A. K. Dey, and H. Tokuda, “Reducing Users’ Perceived Mental Effort Due to Interruptive Notifications in Multi-Device Mobile Environments,” in Proceedings of the 2015 ACM International Joint Conference on Pervasive and Ubiquitous Computing (UbiComp ’15), 2015, pp. 475–486.
  • 大越匡, 野崎大幹, J. Ramos, 中澤仁, A. K. Dey, and 徳田英幸, “ユーザの認知負荷を軽減する情報提供タイミングの検知,” 情報処理学会論文誌, vol. 56, no. 10, pp. 1944–1958, Oct. 2015.

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